浮き輪と谷尻谷とお金明神


 暑い夏。岩も山歩きも本調子が出ない。そこで日曜日は沢に逃げることにした。今年の沢始めだった。

 今回目指す沢は、鈴鹿最奥の沢の一つ、谷尻谷とした。相棒としてカリメロが付き合ってくれた。

 朝明渓谷の大駐車場に車を停めて、まずハト峰峠を目指した。今日も暑く、ここまでのわずかなアルバイトでも結構疲れてしまった。
 
 ヒロ沢を下り、神崎川本流に降り立つと、青い水の流れが出迎えてくれた。さあここから沢に入ろう。沢装備に着替えて、流れに足を沈めると、火照った体を沢水が冷やしてくれるのが分かった。谷尻谷出合いまでは、流れを下る事になる。

 本流は所々に深い淵があった。ほぼカナヅチの私は、必死の泳ぎや巻きを駆使してパスしたが、カリメロは浮き輪なる武器を持ってきていた。沢に浮き輪とはふざけているのか、それとも新たな時代の幕開けなのか?とりあえず淵の下りは、中々快適だったと、お姫様がおっしゃっていました。でもさー、肝心のハーネスを忘れていたような気がするんだけど。



 左から暗い空間が合流してくる場所が、谷尻谷出合いだった。F1は奥まったチョックストーン滝。これは左岸のガレルンゼから巻く。ネットに書かれていた虎ロープは無くなっていた。谷に下りる箇所が少し嫌らしく感じたので、懸垂下降で下りた。
 大岩を乗越たりすかしたりしながら、側壁の発達した谷を進むと二条の滝が現れた。美しいが登る事は出来ない。相談して巻く事にしたが、左岸緩傾斜部からの大高巻きとなってしまった。斜面を登ると、赤テープを発見した。さらに高度を上げるとピンクのリボンも現れた。足を進めると、傾斜も落ち着き、炭焼き窯跡も出てきた。小谷から流れに戻ると、そこは明るく開けた河原だった。険しい箇所は抜けた様だった。谷奥に目をやると、木漏れ日と、緑が織り成す影と、水の競演が果てしなく続いていた。良い谷だ。


 幾つかの滝を越えた後に、昼飯のラーメンタイム。私はチキンラーメン、カリメロはカップ麺で空腹を満たした。

 ラーメン場から、少し歩くとコリカキ場に到着した。この近辺は良いキャンプサイトだ。焚火の跡が散見されたが、残念ながら黒く燃え残った木が目立ち、綺麗に燃え尽きた跡は無かった。

 沢歩きはここで終了。ここからは、お金峠へ向けての急登に喘ぐ事となった。カリメロの的確なナビでルートは完璧だった。峠を越え、折角なのでお金明神へと足を向けた。冴えたカリナビのおかげで、ぱちっと明神様に到着した。天狗様みたいな岩塔を見るのは何十年ぶりだろうか。


 神崎川本流まで下りて、中峠を越えて朝明に戻った。朝明には夏風が吹いていた。車に到着してカリメロとがっちりと握手をした。喉も腹も乾いて空腹だったが、気持ちは満ち足りていた。沢山歩いて沢山笑った、良い山旅が出来た夏の日だった。

 今回、見た花 イワタバコ、シモツケソウ。

 

コメント