泥と光 完


 今週も野人先輩とあみだ岩へ上がった。先輩は午後から用事があるとの事だったので、ビレーのタイムリミットは午前中。朝6時半には駐車場から山に入った。


 時間は正直者、岩場周辺の紅葉は先週より進んでいた。

 あみだ右壁にTPをセットしてアップの代わりに2回登った。狙いのルートはクラックを使ったフェースとスラブ登りで、スタート部と中間部辺りがバランシーで微妙だ。

 アップ後に小休止、何時もながら先輩の下ネタ馬鹿話で緊張をほぐした。気温も上がってきて岩の冷たさも少しマシになった。カム類を整えてルートを見上げる。自信も確信もなかったが、水底の様に気持ちは落ち着いていた。
 
 1本目と2本目はマスターカム#2、バランスと丁寧な足運びが下部の突破口だ。土の乘ったガバを掴んで3本目の#1そして・・・。試登を行っているから冒険ではない。プロテクションの順番も決めてしまっている。トラッドクライマーとして未熟者であることに間違いはない。集中しながらも様々な考えが脳裏をよぎる。

 上部の微妙なトラバースをこなすと灌木から垂らした終了点は目の前だった。クリップしてロワーダウン、取り付きでは先輩とグータッチをした。


 ルート名は「泥と光」とした。泥と苔まみれの岩を掃除して、その中から見つけ出したライン。多分このルートは他のクライマーは見向きもしないだろう。また苔と土に覆われて自然に帰っていくだろう。

 でも良い。自分で見つけた一筋の光を辿る事が出来た。一歩いや半歩でも前に進む事が出来たから。


 

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