壁の上の影


 南伊勢方面にはチャートの岩場が幾つかある。20年くらい前に何か所か回ったが、すでに忘却の彼方。その中で唯一記憶の底に留まっていた岩場に出かけた。

 高速を走ると思ったより近く、2時間弱で到着出来た。岩場付近には人影は無く私一人だけだった。川の流れだけがそこにあるといった感じ。

 取り付き付近の木が切り倒されていた。ボルトルートに微かにチョーク跡があったので、誰か登りにきているのかもしれない。


 フェースのTP課題にロープをセットしてアップもせずに取り付いた。フリクションの悪いエッジのたったホールドが指皮に食い込んでくる。記憶より難しい。あえなくテンションをかけてしまった。使えそうに見えて使えないホールドが悩ましい。


 テンションまみれで終了点へ抜け懸垂で取り付きへ戻る。2便目は少しマシだったがお話にならない。一人だと休憩をとるのが億劫になってしまうので、岩偵察を兼ね辺りを散歩してから3便目をスタートした。

 スタートは問題なかったが、やはり核心で躓いてしまった。右足のヒールで体が剥がされないようにするのだが、これが中々難しい。そしてホールドがあまりに痛いので指が悲鳴をあげる。結局テンション嵐だった。天気が良いので壁に映る自分の影がピエロの様だった。
 
 計4回トライして指がザキザキになった。かなり早いが昼過ぎに終わる事にした。

 この岩場には他にも困難と思われるルートがある。これを登る事が出来たら素晴らしいと思う。強くなるには時間がかかる。待っている時間はあまりない。機会があれば歯が立たなくともトライしていこう。



 

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