いつだったかトップロープで登った岩を訪ねた。
雨上がりの裏道を歩くと、しずくに打たれて落ちたのだろうか、岩の上に椿の花が乗っていて、突然現れる赤色に驚いてしまった。
天候は回復している様だが、国見峠の辺りには冷たそうな雲が渦巻いて見えた。
国見岳の頂上直下にその岩はあった。正味の高さは3mほどだが、下地がえぐれているので取り付きからの高さは5m弱くらいか。フィンガークラックが走るスラブボルダーだ。ここがマットを運べるような環境だったらボルダーとして向き合うのだが、それは不可能に近いので、以前にトップロープ課題として登ったことがあった。ただどうしても自分の中に釈然としない気持ちが残っていた。ボルダーは無理としてもロープソロなら少しは味が違ってくるのではないだろうか。
そんな気持ちと雨後に登る事の出来る岩と言う条件が一致して今日ここに来た。
岩は乾いていたが、風化した岩肌を掃除する事と偵察を兼ねて、まずトップロープで登ってみた。
岩の表面はシューズで踏むとザラっと滑った。やはりいきなりリードしなくて良かった。フットホールドとして使う箇所を念入りに掃除した。プロテクションの確認もした。マスターカム#1,2が効く。
微かに見えていた太陽が消え、辺りはガスに包まれだした。寒くなってきた。時間は14時を回っていた。ハイカーも消え私だけになった。
気持ちを決めてトップロープを抜き、ソロデバイスをハーネスにセットした。これは今日初めて使うシステムだった。
核心は抜けの部分だ。ナッツを足元にして滑りそうな足を信じてハイステップをしなければいけない。弱気が出て#1とオフセットナッツをプリセットした。
カムでアンカーを作りロープ末端を固定、デバイスにロープを通して登りだした。スタートはハングからスラブへ乗り込む、ここは見た目よりイージーだ。プロテクションを取ってからクラックに立ちこんで上部のカチを取る、少しバランシー。良いフットホールドに立って抜けのホールドをキャッチする。もう一歩、滑りそうな足を信じて立ち込めば、カチにハイステップで乗り込んで終了。
ボルダーのグレードで5級くらいか。強いクライマーならボルダリングで片付けるかもしれない。落ちる事が出来ないクライミングから逃げた結果が今回のロープソロになった。
だからと言って私には何の不満もなかった。自分の選択した方法にある答えを出す事が出来たからだ。
またこの小さな岩を登る事があるだろうか。もしそうなら今度は蜻蛉の群れ飛ぶ頃にしよう。
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