少しづつ紅葉も進み山は秋深し。標高の高い岩場はそろそろ限界かと思いつつ、今年最後のつもりでP3北面に上がった。
裏道の入り口でスーパーソロクライマー氏と偶然遭遇した。藤内小屋まで一緒に歩いて少しお話をした。残念ながらブログは止めてしまったとの話だった。
山道を歩いて紅葉を探したが前壁ルンゼの辺りが一番綺麗だった。奥行きのある黄色と薄暗い岩肌の対比が目に染みた。メットを被りながら上空を見上げると雲の流れが速かった。嫌な予感がした。
「トリケラ」横にある簡単なスラブが今日の目標だった。ここは国見のコルから噴き出る風の直撃を受ける場所。テラスに到着し準備をしていると、風が少しづつ少しづつ強くなってきた。太陽が昇ると風も吹いてくる。夏に来た時ほどの凄まじい風ではなかったが、体温があっという間に奪われていった。
動かなくては寒くて仕方がなかったので、テラスから懸垂下降をして、ルート上を固定ロープで登り返してアップした。下におりると日陰になり寒さは倍増、歯が鳴りだし胴震いも加わった。持参した防寒具を全て着込んで何とか耐えられる状態だった。とりあえず登ったが身体も凍えて固く動きもぎこちなかった。プロテクションの確認をしたところ、新たに購入したトーテムカムの座りが良い事に感心した。
風は強くなるばかりだったが、意を決してリード用ロープを背負い取り付きまで下降した。気温は上がっているはずだったが、増々寒さは増してきた。アンカーはナッツ2個で取る事が出来ると確認。気持ちを集中しようとしたが、寒さと何度も頭上を飛ぶヘリの音が気になって仕方がなかった。
簡単だがもろい結晶のスラブにナチプロとソロリード。風がひときわ強く吹いた時に集中出来ない私は負けた。
「もう帰る~。」
結局リードは止める事にした。中々に弱いぞと独り言を言いながらガチャ類を回収してテラスまで上がった。
手に巻いたテーピングで鼻水を拭きながらザックに荷物を詰めた。標高1000mなれど侮るべからず。来年来るときはダウンとパッチを持ってこよう。
冷たい風に背中を押されるように次の目的地を目指して歩き出した。
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