TRY Ob-LaDi ,Ob-LaDa

 

 某所にあるライムストーンの小さな懸崖。そこに一つのボルダリング課題が設定されている。見てびっくり、触って楽しい、一粒で二度楽しめるアーモンドグリコ的課題、それが「Ob-LaDi,Ob-LaDa」。

 寒さも緩んだとある休日の午後、クライミングの引き出しを増やすべく岩場に向かった。


 閑散とした谷間に巨人の大臼歯みたくその岩はある。かなりの前傾壁だ。

 いきなり取り付けば、身体が崩壊しそうなので、アップを入念に行ってからトライを開始した。

 壁右端のガバから左端の大ポケットまでが、「Ob-LaDi,Ob-LaDa」のラインだ。ガバから次の手が悪い。岩を観察し何度か試行すると悪いホールドを使わずに、次の滑らかな穴ガバに手が届く事が分かった。万事がこの調子、長物なのでぶつ切りにしてムーブを考える方法しかなかった。

 トゥージャム、ヒールフックなどの足技もかませながら、終了のポケットまでのムーブ解析をした。「まるで人口壁みたい、いや人口壁がライムストーンを真似たのが正解かな」とつぶやきながら、おじさんは頑張った。

 1時間ほどで、ばらしは終わった。極端に難しいムーブは無いが、最初から最後までパワフルでストレニュアス。筋肉が歌を歌う系である。

 暖かいとはいえ、太陽が山に消えると寒くなってきた。そうそうゆっくりとはしていられない。適当な休憩の後、今日最初で最後の本気トライをしてみた。



 スタートからスムーズに身体は動いてくれた。穴ガバからカチで引付て棚状に乗り込む、刃物の様なホールドをアンダーで持ち、マッチする。低い位置にあるカチを取り、右足でヒールフックをする。カチをマッチして右手でフレークホールドを取りに行く箇所で足が滑った。いや、正確には抑え込む体幹の力が切れてしまったのだ。

 残念ながら完登する事は出来なかった。この課題を半日で解決するだけの能力は今の私には無かった。残念だが、力を出し切った気持ち良さもあった。

 片づけをして帰路に就いた。山から猿の鳴き声も聞こえてきた。彼ら彼女は何言ってるんだろう。「人間て変な生き物だねー」とか喋ってるんだろうか。とりとめの無い空想は夕暮れの山に吸い込まれていった。

 楽しかった。たまにはライムストーンもいいじゃない。






 

 

 

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