山嵐ing

 

 某所、石切り場跡の崖。高さは無いが傾斜は120°くらいの前傾壁に刻まれた一条のクラック、それが「山嵐」。昨シーズンに初トライしたが、残念ながらというか安定の宿題になっていた。

 登れなくたって良い、逞しくジャムして欲しい、そんな気分で再訪した。

 

 手持ちのマットは、ウレタンの腰が抜けてしまい、底つきがするので2枚のマットを担いで岩まで歩いた。初期のプッシャーは良かったが、後期のプッシャーのマットは良くない。内部ウレタンを加水分解から防ぐためのビニール保護もされていない。使い始めて数年でフニャフニャになってしまった。二十年くらい使っているメトリウスのマットの方がまだ状態が良ぞ、このやろう。

 岩はよく乾燥していた。1階スラブに少しチョーク跡があったが、ほとんど触られた気配は無かった。

 まず岩の上に回り込んで掃除をした。「山嵐」の抜けに使うボロいポケットには、落ち葉と土が詰まっていたので、ブラシでほじくりだした。

 まずはスラブでアップ。このスラブ、アップというには難しすぎる。何度も試みて一番左側の簡単なラインを登ることが出来た。スラブの右側には簡単なワイドクラックがある。スラブで荒れた心をダブルハンドで癒してもらった。

 マットを二階にあげて「山嵐」にトライした。風化が進んだ岩なので、クラックの中は埃っぽい。ジャムするポイントをブラッシングして気休めとした。





 昨年はカッパチームが一緒だったので、セッション効果(妖怪なので百鬼夜行効果?)のおかげで下部はすんなり通過できたが、本日は単独だからか下部クラックに少してこづった。ジャムする位置を少しずらしてしまうと、とたんに体が伸びない。

 何とかやっているうちに、クラックから次のガバを掴む個所までは到達した。ここから次のガバが遠い。冥王星より遠い気分。エンヤコラしても届かない。

 この課題は体幹をかなり使うので、連続打ちすると一気にヨレる。時計を見ると昼過ぎだったので、お手製ハムサンドとストレートティーでお昼にした。寒いけどマットに横たわり空を見上げると、冬の青空。小鳥の鳴き声を聞きながら、このまま沈んでいきそうな気分。こんな贅沢もあるのだよ明智君。




 午後になり岩に日が差してきた。身体は疲れているが、気合を入れようとしていると、突然電話がかかってきた。

 「もしもし………わかりました。」要件を聞くと今から帰るしかない用事だった。後ろ髪を引かれる思い。頭頂はかなり寂しくなったけど、後頭部の毛はまだあるので引かれるとの表現も許されるだろう。

 「山嵐」はまたしても私の冬休みの宿題になってしまった。もう少しパワーを付けなければ、最後のフェースムーブは出来ないだろう。などと考えつつ、最後に1回だけクラックに触って、岩場を後にした。

 登れなかったけど素敵な里山のひと時だった。










 




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