蜻蛉群舞とカエルクラック

 

 久しぶりの晴れ。今日は単独なので一気に稜線まで歩くことにした。藤内小屋を通ると小屋主から声をかけられた。そういえば御在所には来ているもの最近顔をみせていなかった。身ぐるみはがされるかと思ったが、笑顔で送り出してくれた。

 早朝はピーカンだったが、8時半を回るころになるとガスが湧き出して日差しを遮りだした。天候悪化の恐れもないので、日傘代わりのガスがありがたかった。

 全身汗まみれになって稜線の現場へ到着。藤内壁の絶景を眺めながら準備をした。

 今日は、以前登ったフィンガークラックが走るスラブルート「蜻蛉群舞」をロープソロで再登する事が第一目的だった。下界にあれば良いボルダー課題になるのだけれど、場所と下地の悪さで一応ルートとしている。

 ロープソロも久しぶりだし、誰も登っていない岩なので、初めにTRで登って岩掃除をした。風化が進んだ岩なので、細かい粉が岩肌に乗りスリッピーなのだ。2回登って感触を思い出した。

 登山者の集団が通り過ぎた静かな合間をみてリードでスタート。クラックにはマスターカムとZ4がしっかり効くが、リップ抜けで落ちるとグランドするかも。TRでリハーサルしているが、ドキドキしながらリップのホールドに手を伸ばした。カチを持って岩の隙間にジャムをして簡単なマントルをすれば終わり。ここでハタと失敗に気が付いた。ロープが重くて体が上がらなかったのだ。ウリャーと強引に引き上げて、グリグリからロープを引き出して事なきを得た。後から考えると、ロープ引き出し補助の為にセットするべきデバイスを忘れていた為だった。しかも今回新規購入したマイクロトラクションを持参していたのにトホホ。

 このルートは支点類は全てカムとナッツで構築出来るので、登り終わった後には何も残っていない。そこにはただ風が吹いているだけ…と古いフォークソングみたいなのが良いところ。ここまで来てこんな可愛い岩を登ろうなんて考える奴は私ぐらいだろう。




 ガスで遮られているとはいえ、強烈な日光が気力と体力を奪うので、お次は趣を変えて隣の左上クラック掃除をする事にした。

 これまた短いが、下部の岩質が悪く尚且つ下地が切れ落ちている。ボルダーサイズなれど多分リード若しくはTR課題かな。

 懸垂しながらクラックの泥を穿り出していたら、泥の中からカエルが現れた。危うくナッツキーがゲコ殺しの凶器になるところでした。

 整備後はTRで試登してみたが、思ったより難しかった。クラック自体はシンハンドで美しい。一雨降って綺麗になれば印象も変わってくるだろう。





 しかし暑い。襟首あたりが焦げる匂いがする。陰を求めて林の中へ逃げ込むことにした。ここまで上がってきたもう一つの目的はボルダー開拓だった。

 林の中に点在するボルダーは、ほとんどが坊主頭みたいで食指が動かないが、少しは面白そうな岩もある。

 そんな一つに掃除をしてぶら下がってみた。




 ブラシをかけても、まだ表面は脆くてホールドすると粒子が零れ落ちてくる。かけたヒールも滑り落ちてしまう。デッキブラシを持ってくるべきだったかと考えていると、汗に水分を求めてか小蠅がたかってくる。しかも予想以上に林の中は蒸し暑い。風が抜けないのねと気が付いた時には、やる気は0パーセントになっていた。

 達成はしなかったが、とりあえず目的課題にはトライしたので早目に下山する事にした。

 裏道途中の藤内出合いで少しボルダーをして固い岩の感触を楽しんだ。稜線のボルダーは風化が著しいので、あれだけを目的に山に入るのはちょっと寂しいかな。

 藤内小屋で常連さんと御在所神様のM井さんに挨拶して車へ戻った。

 いつもより1時間ほど早く下山したが、体は疲労困憊だった。重荷は体に堪えるけれど、気の向くままに面白そうな岩を訪ねるのは楽しい。気力が満ちたら、ほったらかしにしてある開拓の続きにも行きたいと思う。








 


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