オールドさんから開拓のお誘いがあった。場所は某所の壁だった。確かに岩はあるがあそこの岩は残念岩だったはず…と一抹の不安を感じながら現地へ。クマちゃんも同行だ。
岩場までは僅かな歩きで到着した。岩を見るとやはり固めの泥に礫が詰まった独特の形状だった。
オールドさんの目的はある岩塔に走った一筋のクラック。一目見て確かに魅力的な割れ目だった。
計画のあらましはまず岩塔の頂上に立ち、そこからロープを垂らしてクラックの整備を行うとの事。
まず簡単そうなスラブを登る事からスタート。電ドリを背負ったオールドさんがトライした。古いリングボルトが壁に残っていたが、少し力を入れるとポキリと折れてしまっていた。古いクライマーの残した魂の欠片だ。
特異な岩質に流石のオールドさんも悲鳴を上げながら登っていった。ハプニングもあったが着実にボルトを埋めながら岩塔の天辺へ抜けていった。
頂上からの見晴らしは最高だそうで、古い釘が残置されているとの事だった。私はフォローで登らせてもらった。壁に埋まった礫が良いホールドになるはずだが、どれもこれも安心して力を入れれる物がない。フォローでも心臓バクバク。ボルトをセットしながらこれをリードしたオールドさんは、とってもイカレテル。
クライミング自体は簡単だが、刺激は満点だった。ビビりながら抜けた天辺には、確かに古い鉄片がリスに埋まっていた。
私は懸垂で取り付きに戻り、オールドさんはそのまま目的のクラックの整備にロープを垂らした。
オールドさん喜々とし小石大石を落としながら整備を続ける。クラックは顕著なホールドを境に上下二段になっていて上部はしっかりとしたクラックだが、下部はとても細くプロテクションが取れないらしかった。
そこでオールドさんが取り出したのは定年退職祝いでもらったというハーケンだった。静寂の山中にハーケンを打つ音が聞こえる。クィンクィン…ハーケンが歌う音をこんなところで聞くとは思わなかった。計2枚、特に2枚目のやつはばっちり効いていると思われます。
トップロープにしてクラックの試登をした。まずクマちゃんが頑張った。スタートのフットホールドを幾つか吹っ飛ばし喘ぐ。おそらくこの様な正体不明の岩と向き合った事などクマの経験ではなかったはず。オールドさんが「海谷の岩みたいよ」と言っていた。そうクマちゃん海谷バージンをここで終えたのだね。
そうこうしながらも流石の身体能力でクラックを抜けてスラブを回り込みクマちゃんは天辺に到達した。空は曇天でも彼の顔は満面の笑みが浮かんでいた…多分。
取り付きに戻り、クマ開口一番「オールドさん凄い、頭いかれている」私も否定はしない。
お次に私も登ってみた。ちなみに私はこの岩は初めてではない。かなり昔にこの近場でボルダリングした事があったり、海谷のキャンプ場でボルダーを撫でてみたり、確か石徹白方面のボルダーもこの様な堆積岩だった様な記憶がある。正体不明ではなく正体半透明ぐらいでしょうか?
肝心のクライミングの感想。下部クラックはフェース的で面白く難しい、上部クラックはすっきりとした綺麗なクラックでキャメ#0.75程度がジャスト。スラブは2回目でも心臓に悪い。ちなみに私はスリングでインチキして高度を稼ぐのがやっとでした。
最後はオールドさんがトライした。時折「グへ」と声はでるものの安定した登りは流石だった。この様な岩が好きな奴もいるだろうなとおっしゃっていました。
この岩場はとても目立つので古くからクライマーがトライしていたはずだが、そこまで話題にならないのはこの不安定な岩質によるものだろう。私も過去の経験からとてもクライミングに使える岩ではないと思い込んでいた。だがその考えは今日でなくなった。ここの岩全てではないが、ルーズな岩でも取り組み方を変えれば十分クライミングの対象になると思った。下山中に教えてもらったボルダーもとても面白そうだった。
先入観を捨てさり視線を変えればそこには新たな地平線が見えてくるのではないか、鼻からコカ・コーラを飲むような少しだけ刺激的な一日がそこに。
でも油断ならない岩なので慎重にね。オールドさんクマちゃんサンクユーでした。





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