私のセレニティー

 

 「ドラゴン道場新新アプローチ開通記念整備事業に是非来てください」とオールドさんから連絡あり。どうも土木作業の気配がプンプンしていた。非常に残念ながら午前中は通院の予定があったので、作業はやんわりとお断りをし、昼前からゆったりと出発した。

 県境を越えるドライブは小さな旅。満々と青い水を湛えるダムを横目に小さな虫の様に車を走らせた。

 途中、ナオミンからカムを持参しているか問い合わせがあったので、見えないハートマークを付けて速攻でイエスの返事をした。後で聞いた話ではクラックを登るために、私ではなくカムの到着を待ちわびていたとの事だった。サノバビッチ。

 新新アプローチは暁の広場から獣除けフェンスを越え、山道を歩く。土の香りを感じながらハイキング少しでドラゴン道場へ到着した。

 岩場ではオールドさん、クマナオペア、O型さんと女性のガイドの方、計5名で労働後のクライミングを楽しまれていた。

 オールドさんは膝の痛みが引かないらしく本日は岩場整備一筋の職人道。懸垂下降訓練用のアンカー整備やスラックラインとハンモックの設置などなどを行っていた。後から麓の集落から自治会長の方があがってきて、オールドさんと岩場の事など話をされていた。地元を巻き込んだ岩場の在り方も確実に進んでいるようだった。

 クマちゃんはチョックストーンを右から巻きこみ左の壁を使わずにダイレクトに登るラインをトライしていた。左壁を使うルートは「ラブアタック」なのでダイレクトは「スーパーラブアタック」と言うらしかった。スーパーイムジン的な命名ですね。

 このラインは彼をもってしても厳しく、簡単には登れせてくれないとの事だった。

 私は「セレニティークラック」を登ってアップ、その後「ラブアタック」とセレニティー右のフェースを使うルートを登った。「ラブアタック」は今回初めて登ったが、岩から岩へ体を振り込んで移動するムーブが面白かった。自然が与えてくれるヒントを掘り起こし、考える力をスパイスにルートを作る。オールドさんのセンスが光るルートだ。





 ナオミンは「セレニティークラック」にトライ。カムは私のセットしたものを使いピンクポイントを狙う。クマちゃんのビレーで心を落ち着けてスタート。

 下部フェースは難なく通過し、クラックへ入る。始めはシンハンドなのでそこが核心だ。悩みながら手をねじ込む、ままならないジャムに顔が歪みスネ夫みたいになる。歯を食いしばり負けそうな心を奮い立たせる。鼻をかんだ後のティッシュみたいに顔をクシャクシャにして頑張った。




 が、残念もう少しのところで落ちてしまった。

 私の考えではクラッククライミングは経験値が大きくものをいう。ナオミンのクライミングセンスは抜群なので、あと数回のトライで完登まで漕ぎつけると思います。

 取り付きで「私のセレニティー………………登れてないけど、グへっ、ジュルジュル」と顔クシャ女が嘆いていたので、「はいはい、また山を越えてカムを運んできますよチッ」と呟く心の狭い私が居た。


 最後はクマちゃんのトライで締め。鋭気と腕力を貯めて「スーパーラブアタック」へ向かった。

 スタートし、簡単なフェースからチョックストーンへ飛びつくムーブがまず俊逸だ。ガバからカンテへ手を伸ばす、右足のヒールフックもピンポイントの正確さできめなければいけないらしい。雄たけびをあげながら左手を飛ばし、右足を返す。しかし今日はその日ではなかったらしい。次の瞬間、クマはロープにぶら下がっていた。

 ドラゴン道場のルートは入門的なものが殆どだったが、「スーパーラブアタック」はその中で異色のハードさだ。クマちゃん曰く12はあるらしい。道場に新たな風が吹き込む。クマはどうやら扉を開ける男らしい。




 駐車場で皆と別れて家路についた。山間に入ると夕日を浴びた山が綺麗だった。自然は大きく、人は小さい。でも夢を見る事は出来る。今日も良い刺激を貰った。私も扉を探そう。明日は晴れるかな。

















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