冬になると南の海岸が呼んでいる様な気がする、多分。
年末休暇に入ったことを機に、私にしては珍しく二日間の岩登りを目当てに熊野まで足を延ばした。
久しぶりに会うカッパ先生ペアとほぼ初対面のキクリンに同行して、初日はお初のヨセミテエリアに向かった。
駐車場で準備をしてエリアの入り口まで少し車道を歩いた。急峻なふみ跡を辿るとすぐに1回目の懸垂ポイント。そこを過ぎると2回目の懸垂ポイントに到着した。岩角が擦れるのでプロテクターを装着したロープをエリアまで垂らした。右側に振りながら下降するとそこがヨセミテエリアだった。
白い岩に青い海と青い空。太陽は燦燦と降り注ぎ、波は静かに歌っていた。
先生とエリリンは「海のメモリー」という難しいのを練習するらしい。私はキクリンと登ることになった。
ラインが一目瞭然で目を引くのは「StayGold」と「MyWay」の2本。グレードを考えると「StayGold」が私が登るには妥当なところだろう。はじめはTRでと考えたが、エリリンも先生も、折角なのにもったいないとオンサイトトライを勧めてくれた。
決めるのは自分。確かに初見でのトライは一度きり。カムを準備してリードでクラックに向き会うことにした。
スタートは少し細い。小さめのカムをセットしてレイバックを取り入れながら割れ目を辿るとハンドが効き始めた。自分でもわかっているのだが、クラックに取りつくとその周辺を観察する余裕がなくなってしまう。コーナーなのでステミングも有効だが、クラックだけで登ってしまい力を上手くセーブ出来ない。最後のハング状を越える箇所で力が尽きかけたが、先生の「奥にハンドがバチ効き」の応援の声で何とか終了点までたどり着くことが出来た。
(注) 登っているクライマーはカッパ先生
声が涸れ、空咳が出て仕方なかったが綺麗なクラックを登ることが出来て素直に嬉しかった。
お次はキクリンの番。クラックは始めたばかりとの事だったが、その登りを見て驚いた。「あれメチャうまいじゃん」
私が疲労困憊で登った「StayGold」を余裕のよっちゃんで登ってしまった。後から先生に聞くと、キクリンはKO-WALLの講習も受け、世界の岩も登りに行っている大したクライマーとの事。その話を聞き、私の中でキクリンから世界のキクリンに進化したことは言うまでもない。ポケモンみたいだな~。
ヨレの残る私はヨレヨレ。「MyWay」にオンサイトトライするキクリンのビレーをした。このルートも美しい。面に走るクラックを辿り最後はマントルなんかもするのだそうだ。慎重にカムをセットしながらキクリンは高度を上げていく。ビレーをする私も喉に渇きを覚えた。
残念だが、左から右のクラックに移る箇所で流石のキクリンもテンションが入ってしまった。その後数回のテンションを交えながら終了点へ抜けていった。
終了点のキクリンからどちらで登りますかと問われたので、何の迷いもなく「TRで」と答えた私は何時にもなく正直者だった気がする。
「MyWay」はとても良いルートだった。難しくてTRでさえテンションの山盛りでしか抜けることが出来なかったけれど。クラックのみならずフェース的要素もあり、とても素晴らしい。これを登れたら嬉しいだろうなとしみじみ思った。
先生ペアは「海のメモリー」をワークしていたが、こちらは更に難しいルート。一本目のプロテクションはスカイフックなんだって。ヒューヒューだぜ。このルートもTRで登らせてもらったが、途中であきらめて降りてきたのは年のせいではありません。私の未熟さ故です。今回のメンツでエリリン以外は私より年上の男の子なので、年のせいとは口が裂けて言えないの心よ。
帰りの登り返しも辛かった。練習はしてきたものの、全身の筋肉が攣ったような状態になり、右手の指を左手で開きマッサージ、あちらを向けば首筋が攣り、こちらを向いても首筋が攣る。腹筋が攣ったのは我慢で忍の一字。最後の部分もフィックスがクラックに入り込み、これを解消するに一度降りなければいけなかった。仕舞にはキクリンにザックをつかんで引き釣り上げてもらってセーフだった。
車道に戻った時には疲労困憊だったが、エリア入り口の看板と記念写真を撮ってもらいました。
ヨセミテエリアはとても良い岩場だった。残置物は終了点のボルトのみでナチュプロを使いこなせなければ登れない。行きも帰りもそれ相応の技術が必要だ。この近辺の岩場の中ではアプローチはまだ容易な方だと先生ペアは教えてくれたが、私には刺激十分だった。
クライミングもその他の技術も何時までも初心者レベルの私。心は何時までも黄金のままで良いけれど登る方はもう少し進歩したいものだと強く思った次第。(一晩寝るとその決意も忘却の川の流れに流されていくのが常ではあるけれど)
久しぶりにご一緒したカッパ先生ペアにキクリン、そして開拓してくださった方々には感謝しかありません。ヨセミテエリアは再訪したい岩場です。
とても面白い一日でした。
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