少しだけ銚子川ボルダリング

 

 道の駅で車中泊をした。寝始めたころは車は少なかったが、真夜中になると駐車場は車中泊の車でいっぱいになっていた。

 私の高級軽自動車は天井が高く圧迫感は少ないもの、シートがフルフラットにはならないので、腰のあたりが痛くなり、夜中に何度か起きて小用をする羽目になってしまった。そんなこんなでも国道を走ってゆく車の音が子守唄になってくれて寝付けないことはなかった。

 朝になるとほとんどの車はいなくなっていた。釣りか旅行が目的に人たちが多いのだろうか。

 2日目の目的地は銚子川としていたので、起床後はまずそこまで移動した。

 おそらく現在も登られてはいるのだろうが、その場所もわからないので10年以上前に遊びに来た釣り橋のあるエリアに車を止めた。




 太陽がささない谷間は寒く、岩は結露の為かわずかに濡れているように感じた。昨夜にコンビニで買い込んだ食料を食べながら湯を沸かした。寒いのでカップうどんは食べたい。しかしおにぎりだけでも既に腹八分目を越えている。食べ物を残すことは出来ない。買いすぎだった。朝から葛藤だった。

 腹パンパンでマットを背負って谷に降りた。過去に遊んだ記憶のある岩は思ったより大きく、マット1枚とパン腹では心もとない。簡単なスラブで遊んでいるうちに寒さも手伝いお腹がグルグルと歌いだしたので、大キジをするためにトイレに移動した。

 キジ後、もう一度吊り橋へ戻るのも何なので、少し下流にある場所で遊ぶことにした。確かここも来たような記憶があるが定かではない。岩はつるつるで赤黒い苔でおおわれている。最近はだれも登っていない気配しかない。

 しかしそこはそれ。まっとうなクライマーなら見向きもしない岩にも一縷の楽しみを見つける事が私のほぼ唯一の能力である。つるつるの岩肌にあるわずかなホールドを発見し、ムーブを試してみた。しかし、なんてことない一歩だが足を信じる事が出来ない。ヌルっと滑るのだ。

 それでも、あーでもこーでもと触っていると、正直者の太陽が少しづつ谷間に差し込んできた。そして岩肌が乾くと、今まで出来なかった立ちこみも簡単に出来るようになった。ツルコケ岩ではほんの少しの濡れも禁物なのである。

 その後、簡単であるがマントル的な課題を数個登ることが出来た。





 下流にあるキャンプ場からもうもうと煙が上がっているのが見え、しばらくすると消防車のサイレンの音が聞こえてきた。何やら不穏な気配もしたが、私のいる場所は平和。

 寝転がり、空に流れ消えてゆく雲を眺めていると、体から毒素が抜けて地球にアースされている様に感じた。この時間を表すのに贅沢という言葉しか浮かばない私は誠に勉強が足りない。







 





 

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