しくじった。ロープに体重をかけたら地面まで落ちてしまった。
アップとして登った「二の腕クラック」岩はドップリと濡れていたが、クライミング自体は問題なかった。終了点にロープをクリップしてロワーダウン。最初にきめたキャメロット#5が回収できなかったので、少し上に別カムをセットしてテンション。ロープから体重を抜いて#5を回収した。そこから再度ロープにぶら下がったが、なぜか地面まで落ちてしまった。
3m弱だったのとお尻からだった事が幸いして打撲だけですんだが、反省する事しきり。
原因はアンカー用にセットしたスリングを絞ってなかった事だった。カム回収時に一度荷重が抜けたことにより滑りやすくなっていたのだろう。尻をさすりながら頭上にあるスリングを見上げて思慮の浅さを嘆いた、春の山。
多分、お尻は青タンが出来るだろう。何時までたっても尻の青い奴、それが私。
先期に「ムーンシャドウ」横のスラブに打ち損じたボルトの回収と新たなボルト設置のためにエンヤコラとハンマードリルを担いで上がってきたが、今日の地下一階は岩がかなり濡れている。はじめは「ムーンシャドウ」をソロで登る気でいたが、岩と尻に相談して止めておくことにした。
さればと目的を変更して、先週思いついた「ラストスイーツ」2P目の偵察を行うことにした。荷物がとっても重たいので少しの移動でも大変に面倒くさい。唸り声をあげながらザックを背負った。
「ラストスイーツ」取り付きは本日も癒しの場所。なぜかここだけ植林されていないので、風景が目にも心にも優しい。
尻をさすりながら終了点へ回り込み、懸垂でルートの確認をした。概要としては簡単なスラブから垂壁のセットメニュー。ボルトは打設済だがハンガーだけ開拓者により取り外されている。開拓者である四太画伯にこのルートについて問い合わせたところ「登っている最中に頭を打って記憶が定かではない」との事。頭を打って記憶喪失だなんてウン十年前のテレビドラマの主人公みたいではある。と言うか頭打った事を覚えているのなら記憶喪失ではない、おそらくただの老化による物忘れが正解か。
このピッチ、ハンガーをセットすればリードも可能だろうから「アペリティフ」から「スィーツ」2P目への継続なんて遊びも出来るかもしれない。
座っているより寝ていた方が尻に優しいので、ロープタープを敷いて横になれば至福の時。本日もこの岩場は静かなり。聞こえてくるのは風と小鳥の声。声の方に目をやると青く美しい鳥を見つけることが出来た。あれは「オオルリ」だろうか。声真似のつもりで口笛を吹いてみたが、下手糞なさえずりには見向きもされなかった。
次に何をするか考えた。移動は嫌なので目の前にある「オードブル」にトライすることにした。下から見ると簡単そうに見えるが、過去に何度も触っているのでそれが間違いであることはよくわかっていた。でもやってみよう。
アンカーのセットは先ほどのことから入念に行った。絞りまくってやるぜ~。
スタートはガバだがホールドすぐに細かくなる。あれ?何か分からないぞ……あえなくテンション。過去の記憶が全くありません。下はそんなに難しくなかったはずなのに…。かろうじて2ピン目にかけたところでギブした。
何かホールドが滑ると何時もの言い訳をしながら、終了点へ回り込み懸垂しながらヌンチャクを回収した。このルートは上部にある壁からの染み出しが落ちてくる場所にあるので、その加減か今日は湿ぽかった。と言うことにしておこう。
夕方近くになったので重荷を背負いふらつきながら下山した。足腰がミシミシさ。
途中の河原で20分ほどボルダーで遊んだ。右端のカチからシットでスタートするラインは一手目を取るムーブが厳しい。棚足があるがそこに足をのせるとホールドの効きが悪くなる。目の前に縦ガバがあるが、それを取りに行くとスタートホールドから指が弾かれて後ろに吹っ飛びそうな予感。尻の次は後頭部強打になりそうなので追い込みは禁止だぜ。この岩の右側にも面白いラインがある。ガバ足に立ってスタートすれば簡単だが、立つ前からスタートするととても難しく美味。登れん。
何一つ目的は果たせなかったが、ヘロヘロになって今日の遊びは無事終わった。
私はもう登攀者ではないなと思う春の夕暮れ。少しだけ雨の匂いがした。
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