AA会の夏合宿三日目にまたもや乱入させてもらった。待ち合わせの藤内小屋でナベッチとまっちゃん、それにパールさんと鳩ちゃんと合流した。鳩ちゃんはお初の顔合わせだった。
今日もいい天気で暑い。目的地は砦岩。準備をして出発だ。
中尾根に比べると楽なアプローチだが、小屋までで汗みどろの私は急登でブースト汗をかいてしまった。
まずは1階で簡単なクラックを登る事にした。鳩ちゃんはクラック初心者だからとの先輩方の優しい心遣いである。
簡単クラックというと私が開拓した「アペリチフ」しかないと、誘導というか我田引水というか怪しい話術で勧誘して「アペ・」を登る事になった。
私がリードしてTRをセットし、皆さんで楽しんでもらう計画。汚れやすいルートなのは分かっていたが、いざ登り始めると落ち葉などがコッテリ積もっていた。傾斜が緩いので何とかなるがゴミをほじりながらのクライミングは味わい深い。
TRをセットし賞味タイム。クラック経験者のナベッチやパールさんは何の問題もなかったが、鳩ちゃんは予想通りに楽しんでくれていた。「ジャムが効かない」と叫ぶ声が岩に吸い込まれ消えていった。嗚呼諸行無常。でも2回目は1回目より格段に上達したそうだった。鳩は進化するのだ。
次は「コブラツイスト」だよおっかさん。懸垂で終了点までおりTRをセットした。毎度のことなのでこの様な作業は慣れているのだよ明智君。
まずまっちゃんが取り付いた。が少し上がったところでギブ。静かな男は静かにロープにぶら下がっていた。多分膝とかに悪い気配を感じたからではないだろうかと想像した。
次にナベッチが突入した。「ウォォォー」と雄たけびが聞こえてきそうな勢いでクラックに向き合う。数年前は全く歯が立たなかったらしいが、色々考え色々とテクを試してテンションを入れながらも抜けていった。進歩あり。過去の自分を越えた男(失礼女)だ。
パールさんも悪戦苦闘しながらも抜けていった。経験豊富なところで流石である。
ロープ回収などをしていたらあっという間にお昼になってしまった。二階に上がりランチタイムとなった。一階にはない頬を撫でる風が甘露である。
食後はまず、現場合流したカズさんとウッチーがセットしてくれたロープで「ブルースカイ」を触らさせてもらった。昨年も一人TRで試みてはいたが、今回も強烈に力不足を感じた。でも花崗岩のカチフェースは好きである。
その後も他の方も続々とトライ。独自路線でパルートを拓くパールさん、相変わらず全力投入のナベッチ、ズタボロの鳩ちゃんなどなど。カズさんは今日の様な暑い日でもリードで「ブルースカイ」を抜けたらしくとても強いクライマーとの事。ウッチーは11の壁を他の人に感じさせることが出来るスタンド使いみたいなクライマーらしい???
そして満を持してその時が来た。ナベッチの「砦クラック」への挑戦である。今まで跳ね返され続けてきたが、今日はどうなのか。
カムを入念に準備しテイクオフ。ビレーは安心安全のまっちゃんだ。全員の視線を背中に受けながら手をクラックにねじ込んでいった。
順調に高度を稼いでいくナベッチ。長いルートだがカムセットにも迷いはない。最後の抜けも右壁を使って上手くこなしていった。そして姿が岩の向こうに消えていった。
しばらくして完登のコールが聞こえてきた「やったー」 下で見守る全員が歓声をあげた。ロワーダウンしてきたナベッチは感極まった様子で、しばし女泣き。本当に過去の自分を越えたナイスクライミングだった。ずっとビレーをしていたまっちゃんもお疲れさまでした。
まだ時間があったので私は久しぶりに「インディアンサマー」を登った。何年かぶりの再登だった。ミッドサマーのインディアンサマーだったが熱い風も心地よかった。
「砦クラック」では鳩ちゃんがジャム練習に最後の最後まで頑張っていた。ビレーするパールさんはまるで母親の様な優しい目だった。「登らないと晩御飯抜きよ」そんな優しさ。
気が付けば16時過ぎ、合宿最終日だったので小屋での荷物の片づけがあり、名残惜しくもあるが貸し切りの砦岩を後にすることにした。
藤内小屋に戻ると小屋主や常連さんが迎えてくれた。そしてとびっきりジューシーなスイカをご馳走になってしまった。食べるほどに体に水分がいきわたるのが分かった。美味いまさに真夏の果実である。
全員で小屋から下山していると後ろから猛スピードで追いついてくるクライマーの気配あり。振り返るとヨーロッパアルプス帰りのA子さんだった。全ての目的は果たせなかったらしいが、そこまで行くモチベーション行動力に圧倒されます。少し話すとまたもや彗星の様に歩き下って行った。カッコいい。
部分的に参加させてもらった夏合宿だったが、久しぶりに愉快なクライミングが出来た。一人岩に向き合う時間も良いが、仲間とコミュニケーションをとりながら登るのもまた良い。
こう書いていると、すぐにでもジャムをしたくなってきた。カチを握りこみたくなってきた。粒に乗り込みたくなってきた。日々の仕事は辛く、体も色々と不調がある。でもそんな事は少し忘れて、登攀列車に乗っていこう。さあ行こう。
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