謎道の岩場へご招待

 

 砦岩の一本南側の尾根筋に誰が拓いたか分からない道がある。急登ではあるがフィックスも張られており過去に強力に整備されたと思われる謎道。

 その謎道沿いにある小さな岩にルートを3本作ったのは、私の過去の一頁。

 こんな話に興味をもってくれたナベッチとまっちゃんをご案内したのが今回の話である。

 

 裏道から謎道へ入り込み落ち葉で滑る山道を20分ほど。最近歩いていないので道は荒れていた。道に迷ったりしたが何とか汗みどろで岩場に到着した。

 登る準備をしているとナベッチのザックから冷凍ミカンが出現した。「ゲゲゲゲ」と驚きながら感謝の言葉より早くミカンにかぶりついたのは全て夏のせいです。

 まずは「ハレルヤ」から登ってもらうことにした。瑞浪でクラック練習に励んでいる二人なのでリードでトライを選択。流石だね。

 一番手はナベッチ。汚いクラックだが好き嫌いを言わないのは、割れ目病に脳が侵食されている証と思われた。今日も凄い勢いでガザガザのワイドに体をねじ込んでいく。観察しているとムーブが私とは全く違うし、登りにも余裕が感じられる。「へー」と感心しているとあっという間に終了点まで到達してしまった。見事オンサイトだ。



 二番手はまっちゃん。彼も楽勝だろと想像していると、あら?なぜか苦戦している。あら?荒い呼吸が聞こえるわよ。そのうちに力尽きてしまいテンションが入ってしまった。仕切り直しを試みるもやはりだめだった。体のサイズで難度が変わってしまうのがクラックの妙味だが、このルートは小柄な人向けということか。余談だが、この時写真の一枚に笑顔を浮かべる悪魔が映り込んでいた。




 一応私もリードでやってみたが再登出来ず。何度か練習しないとあきません。所詮私の力量なんてこんなもんです。

 次は「ナインボール」にトライしてもらった。こちらは一番手はまっちゃんが行った。積み重なった大きな岩の弱点を縫うように登るこのルート。中々の面白ルートと思うのだが、私以外は登った人はいないのでその評価はいかに。

 登りにくいクラックでスタート。3mくらい登りようやく最初のカムをセットできる。少し下向きのフレアクラックにジャムを効かせなければいけない。ハンドをマスターした人ならば問題はないが、ここまででけっこう緊張する。そしてそこからはジャムにマントルとトラバースと盛りだくさんのムーブで核心に突入だ。眼前の粒ホールドと足を信じて岩棚を目いっぱい左にトラバース。ガバに手が届けば幸せいっぱい気分になれる。




 核心に到達したまっちゃん。気が付けば後ろにある大木にバック&フットをしている。いやいやこのルートはワイドではないわよ。ちなみに一度木に体重を預けると岩に戻るのも難しいそうな。ガバに指がかかってもそこから少しボルダチックなムーブが待っている。オンサイトならばさぞかし難しかろう。カムは離れた足元にセットしているので、ここで落ちれば下手をすればグランドになってしまう。

 私は掃除に整備と岩をしゃぶりちぎってから登っているので、そこまで怖さはなかった。だが今のまっちゃんは、メガネをはめたまま風呂に入ったマスオさん状態だ。暑さと恐怖で曇ったメガネで訳の分からない岩に向き合っている。「暑い」「怖い」何度か逡巡の後、意を決してまっちゃん岩を蹴上がる。そして抜けのホールドに手が届いた。見ていた私も緊張しました。そこからは問題なく終了点へ到達した。




 ナベッチはTRで登った。リーチが足りないので核心のガバ取りに超苦戦。思いっきり飛びつけば届くが、リードでそのムーブはとてもじゃないが出来ない。もしリードするのなら背面にある大木から予めスリングを垂らすなどの工夫が必要か。




 ランチ時にはナベッチからまたもや差し入れ登場。爆弾みたいな巨大ゼリーをいただいた。君もドラえもんの弟子なのね。少し凍ったゼリーは天上の味。山のスイーツは正義である。ご馳走様でした。

 お返しに手持ちのホモソーセージをあげたら「ホモ」「ホモ」と二人で騒いでいた。いやいや断っておきますが、私は全力で女好きですから。




 最後の締めは岩を変えて正統派クラックの「オールドソング」に案内をした。数年前に整備した時には取り付きに木が生えており人が登った形跡はなかったが、よく観察してみると下地の岩に一本だけ古いハーケンを認めることが出来た。藤内小屋からも良く見える位置なので、過去に登った人がいるかもしれない。

 ナベッチが一番手で登った。もちオンサイトトライだ。下部もスムーズであれよと高度を稼ぐ、クラックが広がり傾斜が落ちる部分が核心だが、上手く足を使い抜けていった。見事なクライミングだった。ロワーダウンして取り付きでイエーと意味不明ポーズで喜びを表していた。




 お次はまっちゃん。スタートから動きが悪い。仕切り直してもよろしくない。どうも今日は不調の日の様だ。それでも踏ん張り頑張り終了点まで抜けていったのは大したものです。私ならすぐに諦めますから。




 本日もあっという間に16時を過ぎた。私のルートは終了点を木に頼るものが多く、スリングも残置していない。自分で考えながら作る必要があるので、そういった部分でも時間を使ってしまう。

 謎道をそのまま下山するのは、落ち葉が滑るので危ないと判断して、砦岩道へガレ沢をトラバースした。最後にちょっとしたバリみたいなアクセントになり面白かった。

 藤内小屋へ顔を出すと主とK林さんの二人が出迎えてくれた。主曰く高校野球で沖縄が優勝したので今夜は宿泊費はタダらしかった。上機嫌で「三人泊まってけ」と言ってくれたが、いえ帰りますときっぱりお断りしておいた。

 本日のまとめ。ナベッチとまっちゃん、お二人の謎道の岩場の感想はまずまずだったよう。

 綺麗に整備された岩や難度を求める方には不向きだが、誰も来ない静かな岩が希望だったら砦岩の地下一階以上に静か。聞こえてくるには小鳥の鳴き声と時折藤内小屋主の笑い声くらい。

 

 そう…それでもいいですか? では謎道の岩場へご案内いたします。














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