中尾根P4 パール第一主義

 

 日曜日。お山はガスが濃い。昨日は秋を感じる晴天だったが、本日は湿度高めで岩は湿気湿気。

 そんなアンニュイな日だったが岩に向かう事に理由はない。

 今回は「狭き門」を希望されているというパールさんと、久しぶりに妖怪ポストに連絡をいただいたカッパ先生と私の異色トリオで中尾根P4に上がった。

 登山道途中で先生と合流、藤内小屋では別行動のナベッチ達と遭遇、パールさんも小屋でラジオ体操をして私たちを待ってくれていた。朝からフルスロットルだ。

 中尾根までは遠い。大汗吐息でモンキーの頭に到着し、懸垂ポイントから下にコールをすると何故か昆虫採集している様な軽装の人が顔をのぞかせてきた。そして私の名前を呼ぶではないか。頭も目も悪い私には誰だか分からなかった。どなたかと尋ねると「ヒラヤマユージ」ですとの返答。いや絶対ヒラヤマユージ氏ではない事はすぐに分かった。そのうち「えー僕の事忘れたの酷いなー」とも。ちょっと目が悪いのでと説明するとようやく「OHです」と本当を名前を教えてくれた。予感はあったがスーパーソロクライマーで開拓王のOHさんでした。クライミングだけではなくジョークもイケるとは知らなかった。

 今日は登る予定の「狭き門」右のフリーラインもOHさんの作。しかも中尾根周辺はクラックの宝庫。少しお話ししただけであれこれと開拓したラインの情報を教えてくれた。今日もP4ノーマルの左側を開拓中だった。昆虫採集の人いやOHさんと出会えただけでも中尾根に来た甲斐があったというものだ。

 懸垂でP4取り付きに3名が揃ったらクライミング開始。このルートお初のパールさんに「リード?トップロープ?」と尋ねるとお淑やかにトップロープを選択された。

 聞くところによるとパールさんもワイド好きの変●らしいので、上部のクラックをどう処理するか私として興味深々だった。

 岩の状態も良くないのでハングに到達するまでが一苦労の様子(そうそうけっこう難しいよね~)、ただクラックに入るとさしたる苦労も感じさせない登りで登ってしまった。(参考にならないやんあかんやん)  注()内は私の心の声




 クラックは5.9くらいというのがパールさんの体感らしかった。ものすごく苦労する私にはにわかには信じがたいというか信じたくない。

 お次は先生の番。先生もこのルートお初です。最近岩登りをしていないと言いながらそこは12クライマーなのでクラックまでは問題なし。そしてクラックにはいると何かゴニョゴニョとしている。そして停止してしまった。ビレーしている私はパールさんと「楽しんでいますね」と超適当な感想を言い合っていたが、先生は中々上に登っていかない。楽しんでいるのではなく苦しんでいる?と思い始めて少し、ようやく終了点に到達したコールが聞こえた。

 ロワーダウンしてきた先生は全身から異常な汗が噴き出ていた。いや汗でなく汁だぞ汁、そうカッパ汁だ。カッパから水気が抜けたら●んでしまうのではと心配したが、何とか会話は出来た。そしてゼイゼイしながら言った一言「ワイド嫌い…」 

 体の大きな先生はクラックに体が入らずにとても苦労したとの事。「私は骨盤が大きな安産型なんです」とも詳細な説明をしてくれた。流石、先生、心身とも痛みかけでも的確な表現力です。




 最後は私。必要と思われるカムをぶら下げてテイクオフ。ヌメヌメ地帯を通り抜けてハング越えでカムのチェックをした。5番を試すがスカスカだ。6番は背中に回り込んでしまい手が届かない。TRとはいえ安易にぶら下がりたくはなかったのでチェックを止めてそのまま登った。クラックへはこの前見つけた方法が有効だった。ズリズリゼイゼイと頑張り何とかノーテンで終了点に到達できた。ミジンコ的進歩ではあるが過去の私を越えることが出来た。ロワーダウンしてくると先生が「スイスイじゃないですか」と言う。ノーテンだったと伝えると「そーですか。でも私が写真撮っていないので証拠は一切ありませんよ」と疲労した体に染みるお言葉をくれた。今度一緒に登るときは頭の皿に護符を貼ってやると心に誓った。

 パールさんはもう一度「狭き門」を登って矢継ぎ早にノーマルルートも登っていた。小さな体でよく動くウルトラ元気溌剌である。

 その間私は疲労で夢うつつ。中尾根取り付きは景色も良くいつ来ても本当に良いところ。




 次に右隣にあるOHさんが開拓したフリーラインを登ってみた。岩の状態からこちらもTR一択だった。先生、私、パールさんの順番でトライした。このルートはスタートにムーブがある。そしてその部分のクラックが細い。横で開拓中のOHさんからムーブの確認の声がかかる。OHさんでは届くクラックに小柄な人が届くかどうか。自分が拓いたラインが万人にマッチするかどうか。開拓者としてのOHさんは考えている事が深かった。

 言わずもがなこのラインもとても面白かった。体感10aか10bくらいかな。リードするのなら小さなカムが必要です。細いクラックにはZ4の0.1番がよくなじんでくれたが、複数のカムセットしないとフォール時にはじけ飛ぶ可能性あり。中間部は乾いていれば快適なハンドクラックが楽しめる。最後は風化の進んだ岩相手に要奮闘である。





 皆さん満足したのでP4からモンキー頭に移動した。この移動だけでも時間が消費されてしまうし、肉体的疲労もある。

 ここでカッパ先生からデザートの差し入れを頂戴した。立派な大きなゼリーだった。先生ナイスです。尻子玉ゼリー美味しゅうございました。




 登り足りないパールさんは締めに「モンキーバック」をご所望だった。やはり元気だこの人。ロープセットでは先生がパールさんにあれこれとアドバイスをしていた。この様な細かな心遣いはカッパ先生ならではである。

 TRでパールさん、先生、私の順番で最後の力を振り絞った。短いが傾斜の強いこのルートはやはり手ごわかった。三人とも花と散ってエンド。過っての藤内壁最難ルートは伊達ではない。私も最後の汁を絞り切りました。

 日の暮れも早くなってきたので急いで撤収し山を下りた。P7で登ると言っていたナベッチ達も見当たらない。コールしてもほの暗くなったスラブに人の気配はなかった。

 藤内小屋まで戻るとナベッチ組が待っていてくれた。かなり待たせた様でまっちゃんとハトちゃんは寒がっているぐらいだった。少しの休憩の後、登山口まで全員で下山した。若い人もいるしバルカン砲乙女もいるので歩いていてもとても賑やかだった。「歌を歌いながら山を歩くなんて大昔の青春映画みたいですね」と先生も感銘を受けた様子だった。そうこの方達は熊鈴不要軍団なんです。

 車に戻ると東の空に綺麗な月が浮かんでいた。確かに兎が餅つきしている様に見える。大昔の人の想像力に感心しながら窓全開で帰宅した。右手でつかんだ夕方の風は確かに秋だった。

 本日もお付き合いいただいた皆様ありがとうございました。

 どうも今回のクライミングで痛めた左ひざを更に悪化させてしまったみたいです。中尾根には行きたし、されど中尾根はちょっと遠し。せめて便器と壁の隙間に膝をスタックさせてニヤニヤするのが関の山いや鈴鹿の山でございます。














 

 

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