地下一階の四変態

 

 昨夜から吹き始めた風は止まる事ない。朝も風は強く、標高の高い場所はガスに覆われていた。そしてスカイラインは通行止め。この時期に閉鎖ゲートから歩く山は遠くもあり、近くもあり。

 今回もナベッチにタケさんにハトちゃんに混ぜてもらい御在所へ。当初はバットレス北面の難度が高いルートを目指していたが、この風にビビった私は砦岩地下一階を提案、ナベタケは好き嫌い無し野郎なので問題は無いが、ハトちゃんには少し酷な選択だったかもしれないと後から反省した。

 砦岩は三層構造になっており、常人の一階、通の二階、変態の地下一階と岩好きにはたまらないミルフィーユを形成している。

 今回はジャンダルマの下から小沢を利用して地下一へアプローチしたが、ここはマムシとかヒルに注意しなければいけない。甘い物好きで血液まで甘いタケさんはヒルに何か所か食いつかれていた。

 岩場に到着して早速ナベッチがみんなに温かいコーヒーをふるまってくれた。いつもながらありがたくて美味しいのだが、ご本人がコップではなくタッパを使って飲んでいるのは何故。お腹に入れば同じと言うその姿は飯場のおっさんだぜ。

 ナベタケはこの三連休は初日ジム、二日目瑞浪そして今日御在所と、登りまくりでその元気さに驚くが、ナベッチは昨日の夜は深夜までバイトをしていたというおまけつきだった。この話を聞いてタケさんも驚き、私なんて驚きすぎて10秒くらい腰が抜けてしまいました。そのタフさ・・・ヤバいお薬でも・・・。

 まずアップはいつもの「二の腕クラック」で行った。リードで登ったが、クラックは昨日からの雨で濡れ濡れで悪く感じた。ナベッチとタケさんは濡れた岩に異常に耐性があるので問題なく登り、ハトちゃんもカム入れの練習をしながら頑張った。






 次は何をするかと考えているとタケさんが「ムーンシャドウ」に目を止めた。私の感覚で見ると濡れているので登るかどうか悩む、いや登らないレベルだが、悪天瑞浪同好会のタケさんには全く問題なく、むしろ美味しく見えたようだった。地下一にご案内して良かったです。

 私はビレーしながらタケさんの登りを見ていたが、タケさん甘いもの好きの変態だけではない事に気が付いた。とても登りが安定していおり、危うさを感じない登りだった。核心のスタート部を抜けてワイド部に入ったところで完登を確信した。挟まるその姿はチョックストーン。ヌルヌルクラックも何のその「ムーンシャドウ」をばっちりオンサイトして私たち三人を魅せてくれた。




 その後TRで私も登ったが、あんなベショベショワイドを喜々として登るなんて、この人もヤバいお薬愛好家かと思ったりしてしまった。

 ナベッチは「ムーンシャドウ」のオンサイトトライを逃してしまった事が少しだけ悔しそうだったが、ご自身でスイッチを入る時がくるまで待っていればいいと思います。クラックはだまってその時までそこに立っていますから。ご自慢の白いTシャツが汚れてしまったのは小さな勲章だね。





 とても強い風が地下一にも吹き込んでくるので、寒がりの鳩ちゃんは我慢しながら濡れ岩に挑んでいた。今日のこの苦行が未来のクライミングライフに生かされる・・といいな。

 昼を過ぎたのでランチと休息の時。相変わらずナベッチの話に腹の皮がよじれて仕方なかったが、タケさんの話も驚きと笑いを運んでくれた。ポストマンの要職にありながら、自分の時間を持ちたいという願いから、肩書を捨て、仕事時間を減らす行動に出た。おかげで収入は激減。全く相談もしていなかった奥様の逆鱗に触れてしまいお小遣いはZEROになってしまった。明日も明後日も休みですとニコニコと笑うタケさんを見て、さすがのナベッチも「タケさんヤバい」とつぶやいていた。

 午後は「ジャムマントル」から始まった。私は何回も触っているので新鮮さはないが、他の三名は初めてのルートに満面の喜び。グレードが高いのでとりあえずTRでエンジョイ。タケさんやナベッチのスタートムーブは私にはとても勉強になった。下部クラックに体を上手く滑り込ませて登るイメージ。私はどちらかと言えば正対ムーブなのでThis is 力技だが二人はちょっと違う。侮りがたし悪天瑞浪同好会。特にタケさんはジャストフィットに見えた。チョックストーン再び。

 ハトちゃんにはジャムマンは難しすぎたみたいでスタート部でロープにぶら下がる事の連続だった。癖の強いルートなので彼女には大変だったと思われる。




 ジャムマンの合間にタケさんは「ラジヲ体操」にもトライしたが、フェース力のいるこのルートには歯が立たなかった。指力が足りないかなとご本人は言っていたが、ジムでの登りからすると難しさはジム課題とそう差はないのでは。慣れれば勝負できると思います。




 夕方近くまだ風は収まらないが、最後にジャムマンにRPトライさせてもらった。今回皆さんの登りを見ていて発見した事があった。核心の体の切替しにはジャムは不要である事。ジャムはあくまでも高度を稼ぐ補助程度。一人では気づかない事も他の人がいると見つける事も出来る。

 タケさんのビレーで登った。呼吸を整えスタート、私のムーブは力を使うので素早く突破しなければいけない。ハンドジャムにアームバーでフィンガーをスタック、左足で高いフットホールドをとらえて体を上げるとガバホールドに手が届く。ここで2ピン目にクリップするムーブが閃いた。右手ガバで隣の岩を右足で蹴り、左足のアウト側で1ピン目が打ってある面を捉える。レイバックとキョンを混ぜたような姿勢で2ピン目にクリップすることが出来た。かなり昔にトライした時も、ここのクリップで跳ね返された灰色の記憶あり。そこから左手を甘いハンドでこらえて姿勢を安定させて縦フレークを取りに行く。ここも以前は右手でフレークを取りに行っていたが、右手ガバでロックして左手でフレークをキャッチすると突破出来た。がここで力と言うか気持ちが萎えてしまった。テンション。何時もながら気持ちが弱い。レスト後TRならば簡単なスラブも必死で這いあがり終了点にクリップした。果たして力を出し尽くしたのかそうでないのか。ただ少しは進展したと思いたかった。




 岩場から藤内小屋へ降り、小屋主とK林さんに挨拶をして登山口まで歩いた。

 本日の締めとしてタケさんに、私の夜のお友達を紹介した。そうナイトボルダリングの課題である。この課題あの課題、スタートはここからなどなど。タケさんはマットを持っているらしいのでこの岩達で遊んでくれたら嬉しいものだ。説明を聞きながらナベッチも岩登りって奥深いと感心していた。そう感じるか感じないかで岩登りの楽しみ方は大きく変わると私は思います。

 暮れなずむ街を見下ろしながら閉鎖ゲートまでアスファルトの道を辿った。少し歩く距離が増えるだけだが何時もと違う感覚になった。

 帰宅後オールドさんから久しぶりにラインが届いたので、返信で地下一で楽しんだ事を連絡した。



 どれもこれも岩登りを満喫できる良いルートだ。オールドさんありがとう。







 

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