ゴードロの谷

 

 連休最終日はアナコンダO型さんと御在所の予定だったが……たどり着けば雨と霰が降ってきた。

 待てば回復するか、それとも転進するか、スマホの天気予報はどれもこれもはっきりしない。おじさん二人悩んで悩んで移動することにした。

 初めは「アナザーワールド」へ向かうつもりだった。しかし車の窓から眺めると小岐須なら大丈夫そうに見えた。岩は行ってみなければ分からない。またもや悩んで悩んで谷底を目指してエイッとハンドルを右に切った。考えすぎて朝から頭が痛くなってしまった。

 駐車場に車を停め林道を歩いた。そう私の目的は「クレージークラック」だった。

 岩場に着くと岩は微妙に黒い。「やっちまった」かと思い近くで観察すると何とか登れそうな濡れ具合だった。

 アナさんと相談して、まず右端の「リアルゴールド」を登って「クレージー」にTRをセットする計画となった。ちなみに「リアルゴールド」の初登者はアナさんである。

 賢明なアナさんは私にリードを譲ってくれた。今日の岩の状態からすると本当に賢明な判断だった。

 おそらくだが久しく人が登っていない「リアルゴールド」のスタート部分は薄い泥土に覆われ、ただでさえ滑りやすい岩なのにニュルチュルになっていた。1ピン目のクリップからして怖かった。ボルトの他にカムを追加しながら登ったが、棚ホールドに足を乗せるにもおっかなびっくりだった。それでもルートの上部になると土は少なく、濡れだけになり何とか終了点に到達できた。今日のこのルート名は「リアルゴードロ」でいかがでしょう。

 隣の「クレージー」のカムを入れながら下降してTRをセットした。TRで「ゴードロ」のクリーニングをアナさんがしてくれたが、アルパインみたいと言っていた。さもありなん。




 時折雨が降ってくるが、風向きが味方してくれているらしく岩場に雨は降りこんでこなかった。そしてその風が木々を揺らすと千切れた葉が舞ってとても美しい景色となった。来てよかった、山は良いなと思わず呟かずにいられなかった。




 本題「クレージークラック」のお勉強の時間。このルート何度もTRで練習しているが、私にはとても難しい。核心部分は私にはワイドハンドサイズとなりジャムした手が抜けてくる。要所でフィストが効くが、そこまでのつなぎ箇所の処理とよれた状態で臨む上部のワイド部が厳しい。ワイド部はエルボロックが自分としては最適かな。このクラックとても勉強になります。

 私もアナさんも2回登ったが、アナさん1回目は途中までだった。2回目は回収もあったので終了点まで絶対登ってねとやんわりと圧力をかけてあげた。するとアナさん禁断のレイバックでするすると登っていってしまった。カムセットが出来ればレイバックもありかな?

 「クレージー」の左側に超難しいフェースルートがあるのでこれもTRで触ってみた。ここで太っ腹アナさん、新品のマムート高級ロープを「使ってくれー」と差し出してくれた。流石アナコンダ立派だな。

 まずアナさんがトライした。スタートから全く歯が立たないのでゴボウを使い、高度を稼ぐ。ビョ~ンビョーン、高級ロープは衝撃吸収も素晴らしい。中間のフェース部からは苦心惨憺だが、何とかホールドをつないでそれらしきムーブを作って頑張った。私も全体重をかけたビレーでアナコンダの一本釣りだ。終了点まで抜けた時にはおそらくロープは1mくらい伸びたのではないだろうか。

 私もトライしたが何にも出来ずにロープにぶら下がった。ビョ~ンビョーン。高級ロープありがとう。ヌンチャクを掴み、スリングであぶみをつくり、一本釣りをしてもらい何とか終了点へ抜けた。新品のロープは更に1m伸びたと思う。




 このルート全く異次元の難度である。これを登るクライマーは多分宇宙人だ。私たちに出来る事はロープを伸ばすことくらいだ。

 休憩中はアナさんの三角関係の話(バミューダトライアングルではなくアナコンダトライアングルと言い、人間関係が消滅してしまうとても怖い怖い事象である)や過去にダンスのインストラクターをしていた話で盛り上がった。アナさんとダンスとはどうも結びつかないが、話を聞いているとどうも本当らしい。(ちなみにこの話をクマナオにしてみたが、絶対信じないと断言された)

 結局夕方まで岩はしっとりだったが、何とか登ることが出来た。天気もいつの間にか晴れていた。明日はおそらくクライミング日和になるのではないかとアナさんと話しながら岩場を後にした。


 このところ週末になると天気が悪い。今日も流入した寒気の影響からか思いがけずに悪天になってしまった。思い描いたルートにトライ出来ない事は悲しいけど、自然の中で遊んでいるのだから仕方がない。体に中に溜まった悪い静電気を濡れ岩に吸い取ってもらったと思えば逆にありがたい。ヨクハナク、ケッシテイカラズ、イツモシズカニワラッテイルソウイウクライマーニワタシハナリタイ。

 なれないけどね。少しだけでも。








コメント

コメントを投稿