御在所は紅葉の季節となり、朝早くと夕暮れには薄暗闇に黄色や赤色が点滅する様になった。じっとしていると寒いが岩はまだ登ることが出来る。
そんな秋の一日にタケさんと砦岩に上がった。今日はいわゆる通の一階に荷物を下ろした。岩は完璧に乾いており、私たちをおいでおいでと呼んでいる様に見えた。黄色の葉っぱも綺麗だった。
私は「アイアンクロー」が目的だった。一階は初めてのタケさんには「コブラツイスト」をおすすめしたところ「いいですね」と快諾してくれた。
準備をして「アイアンクロー」にTRをセットした。昨年も同じ時期にリードトライをしたが、ビビッて敗退した記憶から、アップと同時に下見も兼ねると言う弱気の二乗の計画だった。
私とタケさんと順番に「アイアン」を登ってみた。私は過去に何度かこのルートをTRで登ったことはあるが、どうも下部のムーブを忘れてしまう。これも灰色脳細胞のおかげかトホホだ。
タケさんは初めてだった中々頑張った登りを見せてくれた。そしてその後すぐに「体も温まったのでコブラをリードでやってみます」と言うではないか。タケさんクラックに手を入れて手ごたえを感じた様だった。オオオ!タケさん漢だねとその時私は思いました。
またまた灰色脳細胞の彼方から記憶を呼び戻しタケさんに簡単なアドバイスをした。ムーブについて少しと、クラック好きならボルトは使わず登る事など。
クラックを再度眺めてからタケさんスタートした。スタートから1m程度は簡単だが、クラックが広がりだすと難しくなる。傾斜も強いので体への負担もモリモリだぜ。タケさんかなりの時間頑張ったが敢え無くテンションとなった。ビレーしてる私は顔は残念そうモードだが心の中は「そーでしょう難しいんだからイヒヒ」と本心笑顔全開だった。
その後も何度もジャミングの方法を探っては散り、探っては散り。ファーストトライの後も休憩を挟みながらコブラに挑んだが、タケさん初回で体力をかなり使ったと思われ、トライ時間が短くなってきた。結局核心を突破できるフットホールドに左足をのせる箇所まで進んだの最高到達点だった。高さにして3mあるかないかの到達高度だったが、間違いなく次につながるステップだと思われた。
タケさんが頑張っているので私も「アイアン」のTR練習を1回で止めてリードに切り替えた。体も指先も少し冷えてしまったが、カチを強引に握りこんでスタートした。このルートは名前から指力勝負の様に思えるが、バランスを試されるルートだと私は思う。特に2から3ピン目間のムーブはナルヘソと思わせてくれる。
1、2回目のリード時は2ピン目のクリップが上手くいかずにヌンを掴んでしまった。我ながら下手くそである。ルートも短いし極端にパンプする内容ではないので、短い休憩でトライ出来ることがありがたいが、同じルートばかりでは飽きてしまうので3回目を最終とした。
流石に体が慣れてきたのでスタートからスムーズな感じ。2ピン目のクリップもよく観察すれば使えるホールドが目の前にあった。よし行けるかと、ガストンで適当に出した右手が岩肌を滑ってしまったのは我がスケベ心が成すところか。バランスを崩した体はロープにぶら下がっていた。
アニメの様にガーンとは響かなかったが、頭の中でチーンと終了ベルが鳴った気がした。とりあえず終了点まで抜けてロワーダウンしながらヌンチャクを回収した。
あと一手をキチンと決めればおそらく登れたはず。熱き心を通り過ぎ、かろうじて温き心を保つのがやっとの私は、大声を出すでもなく、本日このルートは終わる事にした。
昼飯の後は「ミルクティース」のRPを目指した。カム残しでは登れたが、セットしながらでは敗退続きの悲しいルート。タケさんにビレーをお願いし、#5,6をぶら下げて綺麗とは言えない割れ目に体を滑り込ませた。
相変わらずスタートから苦しい登りだった。私は記録を取って登る事はほとんどしない。カムの順番も記憶だけが頼り。その記憶も灰色に沈みかけなので、何度挑戦しているルートも新鮮な気持ちで向き合うことが出来る。ようするに無精者のめんどくさがりということである。
で、案の定失敗した。苦し紛れに入れた#5が決まりすぎてしまいニッチもサッチモどうにもブルドッグになってしまった。とりあえずハング下までは登ったが、途中で要らぬ力を使ってしまったのでそこで力尽きてしまった。今日もRPには届かなかった。
ロワーダウンのロープを使いタケさんも登ってくれたが、ハングを越えかけた箇所でロープにぶら下がった。コブラで力を使い果たし&肩を痛めた様だった。無理は禁物ですよ同年代。決まりすぎた#5はタケさんが真心こめて回収してくれた。感謝の気持ちで、隠し持っていた栗饅頭を半分あげたのは私の誠実さの表れだ。
タケさんはビレーなら出来ると言ってくれたが、私だけが楽しんでもつまらないので早めに下山して裏道沿いのボルダーとルートを紹介する事にした。
「ミスターx」「エスパー」「電柱フェース」そして無名の岩達。御在所にボルダリングで訪れる人は稀である。そしてルートを登る人はボルダーには何故か見向きもしない。岩はそこにあるのにと何時も不思議に思う。
最後に、ナイトボルダリングの岩にもたれかかっている楓が紅に染まっているのを見送ると、ちょうど良い時間になった。
そろそろ今期御在所のシーズンも終わりになる。あと何回登りにこれるか。歳をとる毎に一年の過ぎるのが速い事に驚かされる。そのうち光の速度を越えてしまうのではないか。一秒で地球を七周り半。それでもお隣のアンドロメダ銀河まで200万年以上かかる。秋の夜更け、安い芋焼酎を飲むと頭の中に宇宙が浮かんでくるのは何故。



晩秋の良き日にタケさんと楽しまれた様子が目に浮かびますだよ。
返信削除羨ましくもあり、肩を痛めた様子のタケさんが少し心配でもあり。
また私もお仲間に入れてくださいと思ってしまうのはさもありなん。
うらやましいですかウヒヒ。タケさんパンを食べれば回復するはずです、きっと。
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