2021年11月以来のここの岩。約5年ぶり前尾根北面までやってきてしまった。
以前は一気にここまで歩くことが出来たが、もう無理。何度か休息をとりながら岩場まで歩いた。予報では晴れだったが、海からの温かい風が吹き、急にガスが湧き始めた。
薄れた記憶を頼りに灌木へロープをセットして懸垂でおりた。岩の頭にはアンカーが一本だけ。そこにもロープを固定して取り付きまで下降した。岩は所々土満載で以前のままの様な気がした。
シューズを履いて登り返す。スタートから苔土に指を突っ込む必要あり。岩が綺麗だと結構面白いのではと思うが、土を除去する必要が大である。スコップが必要だ。
そこからスラブに立ちこむムーブが困難。フレークガバで引き付けて遠くのクラックを保持できれば良いのだが、クラックも土まみれで指が抜けてくる。TRなのでお助けスリングのアブミが大活躍した。
とりあえず立ちこんでからは、頭上の水平クラックを目指す難しいクライミング。クラックを取るとそこからはダイクを使って登る。ここも難しいが、このラインで土苔が関係ない唯一の箇所かも。ダイクに立って上を見るとワイドクラック内の小灌木と苔の大地が気持ちを萎えさせる。ここが登山道から見える顕著な割れ目部だ。右のスラブは絶望的なのでクラックに進路をとるしかないが、家庭菜園が出来そうな土量に心は中折れ状態。クラックに取り付ければ何とかなる気もするが、土とか何やらで足がスリップしてしまう。それどもクラックをレイバックで登り途中でリップを取るのが一応の正解ムーブと判断した。
いつの間にか天候も回復していたので、汗だくになってしまった。作業疲れもあり、休憩スペースで食事の後は寝転んでしまった。僅かな木陰がありがたかった。
やりたくなかったが、ロープの片付けもあるので2回目清掃クライミング。岩が綺麗ならば結構楽しいのではと思ったりもした。「窓に西日の当たる部屋は何時もあなたの匂いがする」ではなく、「壁に西日の当たる岩は何時も土の匂いがする」と呟いても何も変わらず。今度この岩に来るのならば、デッキブラシなどの清掃道具を担いでこよう。体がもてば。
今日の作業で、このラインをルートとして成立させるにはボルトを4~5本打つ必要がある事が分かった。それと強力な清掃も必要だ。ほったらし歳月の間に、雨などで清掃されているのではないかとは全く甘ちゃんだった。
さてこれからどうするか?ご褒美に持ってきたチビコーラを飲みながら考えにふけってしまった。頭上の木に止まったトンボも何を考える虫ぞ。
15時になったので撤収して下山した。谷に降りると水を頭からかぶって汗と土を拭い去った。これこれ!疲れも一瞬で吹き飛ばないが気持ちは良い。ヘロヘロで藤内小屋に到着すると、小屋主とK林さんから何処へ行ってきたのかと質問された。「前壁ルンゼの左横の岩」と返答すると「あんな所……」と呆れられてしまった。ウフフ。
あの場所には、これまたほったらかしのクラック「トリケラトプス」もあるし、他にも探りたい岩もある。決して一流の岩ではないが、触れば二流ぐらいの味わいがあるのではないか。果たして私が動けるうちにルートは完成するのかしないのか。物語の結末は誰にも分からない。




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