バットレス北面で夏の声を聴く

 

 暑い風が吹く御在所。でも空気は乾いている。そう私の心の様に・・・なんちゃって。

 酷暑続きなので、涼しいと思われるバットレスの北面にタケさんと行ってきた。

 早朝からバットレスの「カリフォルニアドリーミング」は沢山のクライマーが取り付いていた。皆さん日光が当たりだす前に登る思惑の様だった。

 バットレス北面は何年振りだろうか。おそらく10年ぶりくらいかもしれない。

 アプローチは汗が噴き出たが、岩場は日陰なので風が吹くと快適至極だった。クライマーのコールを聞きながら、準備をして「セプテンバーレイン」にタケさんが取り付いた。このルートは10aとなっているがかなり難しい。しかしタケさん頑張って頑張ってオンサイトでこのルートを登り切った。大したものだと感心しきり。ちょうど中尾根に登りに行くA子さんが通りがかり「凄ーいタケちゃん」と歓声をあげてくれた。女王に凄いと言ってもらえるなんてタケちゃん凄ーい。

 過去にリードで登ったこともあるので、私はアップにTRで登ったが相変わらず難しかった。私の感覚としてグレード10a~10bではないでしょうか。

 このルートの下部は壁に向かって右左と二通り選ぶことが出来るが、どちらが正解が分からない。右はボルト左はカムで登ることが出来る。左の方が少し易しいが、伝うクラックはかなり汚れている。

 次に「オーバーザレインボー」にタケさんがオンサイトトライをした。下部は「セプテンバレイン」と同じだが、疲れが出たのか足が決まらずにスリップしてフォールしてしまった。確かにこのフェース部は難しくて怖いですからネ。そこを抜けて中間部でレスト後に核心の上部に突入・・したが・・「テンション、エヘヘ今日はここまでです~」凄いタケちゃんはここで力尽きてしまった。

 偉そうに言っている私も、このルートをリードするのは初めての経験だった。タケさんが伸ばしてくれたロープはそのままでとりあえず終了点を目指した。ひっそりと捨てビナもラックしましたよ。えーえーそうなんです口だけボーイ、いや口だけ初老の人なんです。

 下部だけでも息が上がる。レストして上部にトライ。ここはレイバックした程度の記憶しかなかったが、確かに核心はレイバックだった。一手我慢すれば上のホールドに手が届きそうだが、踏ん切りがつかない。凄くない私は諦めが早い。むんずとヌンチャクをつかんで手を伸ばすとホールドに手が届いたが、スローパー系で抜けてきそうで怖い。かくなる上は忍法スリングアブミだぜ。スリングでアブミをつくり立ち上げれば、次のピンにクリップ完了。そこから上は難度も落ちるが、緊張しまくりで終了点まで抜けた。うーむ全くフリークライミングではない。とりあえず今日の所はこれくらいで許したるわと毒づきながら、隣の「キーホール」と共用でTRをセットしてロワーダウンした。

 取り付きに戻るともう昼を回っていた。耳元を流れていく涼風の音を聞きながら昼食タイム。日陰の快適な岩のテラスなので、一人で居たら昼寝してしまうところだった。日に照らされて輝く岩を眺めていると時間が経つのを忘れてしまう。




 午後はタケさんと交互にTRでワークして楽しんだ。「オーバーザレインボー」はまだしも「キーホール」は何度やってもムーブがつながらない。昔も今も変わらぬ旨さはヤマサのちくわだが、昔も今も変わらぬクライミングと言うのも中々に味わいがあるのかないのか。上達しようがしまいが飽きることなく岩と遊んでいる。人生の妙でもある。




 二人で回していると疲労の蓄積も早い。なおかつタケさんのミウラつま先に異変が生じていた。ゴムが剥離して気泡が出来た様になっていた。来週は池ネーとラブラブ小川山予定のタケさん。とりあえず来週はTCプロでよいとして、リソールに出したミウラが手元に戻るだろう時期を細かく計算していた。多分仕事より真剣に考えていたのではないか。

 下山によき時間になっていたので、バットレスを登っているA子さんパーティに声をかけて岩場を後にした。一壁は太陽が燦燦と照り付けており誰もいなかった。この時期は時間により登る場所を考えないと、あっという間に干物か切り干し大根になってしまいます。

 相変わらず藤内小屋前は賑わっていた。K林さんに聞くと今日は大量の泊り客がみえるそうだった。なるほど小屋主のほくほく顔もうなずける事である。

 今回は久しぶりのバットレス北面だった。回り込んでTRをセットする事も出来ないし、グレードも厳しめばかり。だからこそのクライミングが楽しめる稀有な岩場である。静かで厳しい花崗岩と語らうには良い場所だ。使い勝手の良い砦岩に足が向くことが多いが、やはり藤内壁はクライマーを痺れさせる何かがある。








 

 

 

 

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